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慶應義塾ITP派遣生からの現地報告書です


by keio-itp

帰国の日

こんにちは。パリの大槻です。
1月早々にパリに到着して早3ヶ月近く、ついに帰国の日となりました。第10回目を迎えるこのブログの更新も、今日が最後となります。振り返ってみると、到着した日がついこの前の様に思えます。

IHPのGalois Trimesterもほぼ終わりかけています。先週木曜日には、Galois Trimesterのディナーパーティがありました。ちょっと機会があったので、Fourquauxさんに話しかけてみました。昨年11月に延世大学で自分が発表した時、supersingular caseの一変数p進Lを作った人々の名前を並べましたが、その時に、「発音がよくわかりませんが」、と言って紹介してしまった人です。Fourquauxさんにp進distributionに対応する冪級数の分母の増え方がどうなっているか聞いてみましたが、そこには余り注意を払っていないらしく自分の聞きたかった事は分かりませんでした。最近のテーマは(φ,Γ)-moduleやtrianguline representationだという事です。元々Colmez先生の学生さんで、最近もColmez先生と議論をしている所を何度も見かけたので、いかにもという研究テーマです。

パーティーの終わりに、残っていた料理をこのGalois Trimesterの運営役の一人であるMézardさんが後片付けをしていたので、自分を含めて最後まで残っていた日本人数人で手伝いをしました。
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アルミホイルに残った肉やパンを包んでどうするのかと思ったら、最後に紙袋に入れた物を押し付けられてしまいました。結局それから数日、貰った丸っこいパンばかり食べる事になりました。まだ残っています。中村さん達に頑張ってもらう事になりそうです。
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そのパーティのあった日の最後の講演は、Andrew Wilesでした。90年代にFermat予想を解決して有名になった人です。静かな口調でありながら、迫力を感じさせる講演でした。そこから力を貰ったのか何なのか、講演終了からパーティー開始までの間に読んでいた文献にかなり重要な記述がある事を発見しました。それがきっかけで、非正則関数をうまく扱う事が出来そうな感じになってきました。まだ困難な部分が残っていますが、最後の数日で研究目標とするp進L関数の構成に一気に近づきました。

今日でGalois Trimesterもついに最終週に入り、Jean-Marc Fontaineの60歳記念研究集会が始まりました。次々に大物数学者が現れて、部屋の人の入り具合も今までに見た事が無い程多いです。メインイベントを前にして引き上げてしまうみたいで、ちょっと残念です。

先日の夕暮れ時に撮った、毎日の様に渡ったパリとモンルージュの市境の環状道路の写真を一枚。家に帰る車で一杯なのでしょうか。
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飛行機の時間まで残り5時間程です。自分もそろそろ帰ります。

あっという間の3ヶ月と行った感じですが、数論幾何やガロア表現の大きな物語の一旦に触れられて、非常に貴重な経験が出来ました。講演者の迫力、コメントをする聴衆の反応の鋭さ、いずれも自分には無い物です。今後の自分が、こういう世界の人々に近づけるかどうか分かりませんが、今回の経験を今後の人生に生かせたらよいと思います。

最後に、今回のパリ滞在に関してお世話になったITPの先生方と事務の方々、Galois Trimesterへの参加を勧めて下さった坂内先生、ホスト役を引き受けて下さったエコール・ポリテクニクのPierre Colmez先生、その妹さんでアパートを提供して下さり、色々なトラブルに対応して下さったIsabelle Colmezさん、ルームメートの中村健太郎さん、良く話し相手になって下さったGalois Trimester参加者の今井直毅さん、その他多くの参加者や先生達に感謝致します。ありがとうございました。

これで、今回のパリ滞在の報告を終了致します。
by keio-itp | 2010-03-22 23:02 | 2010年エコールポリテク・大槻