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慶應義塾ITP派遣生からの現地報告書です


by keio-itp

研究

こんにちは。ETHの猪谷です。

早いもので、もうすぐ滞在の半分が過ぎようとしています。2月の終わり
ごろからすこしづつ温かくなり、春めいた日が続いていたのですが、先週
になって突然また寒くなり、雪まで降り始めました。油断していたので凍え
ています。

さて今日は研究の話を。以前にも言った通り私の専門は理論物理学で、
物性物理学の中でも主に超伝導、超流動について研究しています。この
ブログを読むであろう方が物理について詳しいのかまた関心があるのかに
ついてはさっぱりわかりませんが、少し研究内容についてお話します。

超伝導は物質を冷やしていくとある温度で突然、電気抵抗が消失する現象
で、1911年、今からちょうど100年ほど前に発見されました。電気抵抗が
消失するという魅力的な性質から現在では超伝導ケーブルやMRI、リニア
モーターカーなど様々な分野に応用されています。

応用面における超伝導の一番の弱点は、超伝導になる温度(転移温度と呼
びます)が非常に低い点です。通常の金属だと数K、現在見つかっている最
も高い転移温度を持つ物質でも160Kまで冷やさないと超伝導状態になりま
せん。そのためより高い転移温度をもつ超伝導体を探すことが超伝導研究に
おける重要な課題となります。

転移温度の高さを上げるためには、相互作用を強くする必要があります。この
ような相互作用の強い系のことを強相関系と呼びます。私が今お世話になって
いるSigrist先生は強相関系のスペシャリストで、私も現在そのことに関係する
研究を行っております。

ところで、後々、派遣を考えている人のためにこちらで研究する上で困ったこと
をいくつか紹介します。

1つ目は、Zurichがドイツ語圏であるためですが、本が探しずらいことです。基
本的に英語の本ならば図書館に行けば大抵のものはあるのですが、図書館の
本だなにはドイツ語の本と英語の本がランダムに並んでいて、ドイツ語がほとん
ど分からない私にとっては見分けるのが大変です。使用頻度の高い本(例えば
公式集など)は日本語の本を持っていると非常に便利だと思います。

2つ目はコンピュータの問題。研究室には1デスクに1PC置かれているのですが、
古いLINUXで使い勝手はあまりよくありません(もちろんLINUXに強い方は問題
ないとは思いますが)。さらにMathematicaやillustrator等のソフトも入ってい
ません。(正確には使えるのですがかなり面倒な手続きが必要なようです)それに
相当するソフトは入っているのですが、短い滞在期間で新しいソフトに慣れるのは
なかなか難しいですよね。

それを踏まえて持っていくPCは研究を行う上で困らない程度にチューンしていった
ほうがよいようです。ちなみに電気屋の品ぞろえもあまりよくないので期待しないほ
うがよいかと。

さて困ったことをいくつか書きましたが、全体としては環境は非常によく、研究もはか
どっていると思います。

最後に写真を。研究室から見えるアルプスです。うーん行きたい。
では。

猪谷

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by keio-itp | 2010-03-11 14:09 | 2010年ETH・猪谷