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慶應義塾ITP派遣生からの現地報告書です


by keio-itp

2週間経ちました

NISTの岩國です。早いものでもう2週間も経ってしまいました。1週目には、各種安全教育と今後の実験の相談をしました。Newbury博士の研究グループは、2台の光周波数コムを使った分光実験(dual-comb spectroscopy)を行っており、今回の研修では、そのノウハウを学びたいと思っています。dual-combは、これまで観測できなかった、化学反応などの時間変化する現象も高精度で測定できるという画期的な分光計です。

しかし、グループの現在の主要テーマは周波数比較です。現在の時間の標準はマイクロ波で決まっていますが、近い将来光周波数に変わります。高精度な光周波数を提供するものとして、光格子時計があります。光格子時計に使う原子にはYbやSrなど様々あり、どの原子を使った時計が最も高精度なのか調べる必要があります。そこで、Newbury博士のグループは光周波数コムを2台つかって(dual-combとは違います)、2台の光格子時計の精度を比較をしています。

と長々説明しましたが、私がやっている実験はこれとは別です。私のテーマは小型コムの製作です。共振器がすべて光ファイバーで構成されるコム、ファイバーコムは比較的小型で扱いやすいのですが、さらに小型化し、dual-comb実験への応用を目指しています。共振器部分だけなら片手に収まる位の大きさです。しかし、小型化すると、ゲイン媒質の量が必然的に減るので高出力パワーが得られにくく、また超短パルスを得るために必要な分散補償が難しくなります。そのあたりをどう克服するかが最初の課題です。修論テーマでファイバーコムを製作したので、その知識を生かして教えてもらうだけでなく、こちらからも色々提案できるので、楽しいです。

1か月後には、再び主要テーマがdual-comb分光に移るそうなので、それに備えてしっかり勉強しておきたいです。
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写真はNISTの正面玄関です。毎日ここに自転車を止めています。背景の山がとてもきれいです。裏山の一部はNISTが所有しているそうです。
by keio-itp | 2012-07-29 06:14 | 2012年NIST・岩國