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慶應義塾ITP派遣生からの現地報告書です


by keio-itp

研究についての続き

UCバークレーの高井です。今週も先週に引き続き、書類を書いたり研究したりといった一週間でした。
なので今回は先週の続きとして、研究の内容について書きます。

前回も話した通り、Manin 予想の為には、Hilbert 保型形式と四元数環の保型形式に対する Jacquet-Langlands 対応の整数版が必要です。
Jacquet-Langlands 対応とは、通常の保型形式のなす空間と四元数環の保型形式のなす空間の間の対応のことで、ほとんどの文献では各保型表現の間の対応として紹介されています。
Jacquet と Langlands による証明はトレース公式によるもので、その対応の存在を証明するというものでした。
特に、この証明からは標準的な写像は選べません。

整数論や数論幾何において、よく整数環上の構造というものを考えます。
例えば、通常の保型形式のなす空間でいうと、Fourier 係数が整数のもの全体で張られる整数環上の加群などがそうです。
四元数環上の保型形式のなす空間にも別の方法で整数環上の構造が入ります。

ここで、Jacquet-Langlands 対応がお互いの整数環上の構造を保つとうれしいのですが、トレース公式による証明ではわかりません。

ではどう示すか。これに関しては Hida さんの本に書いてある Hecke 環上の加群に対するペアリングの性質と複素数体上の Jacquet-Langlands 対応の存在を組み合わせて作る方法と、Ribet さんによるモジュラー曲線と志村曲線の悪い還元から決まる指標群を比較する方法があります。
私の問題への応用には、前者の方法でうまくいきそうなのですが、後者の方法も面白そうで学びたくなりました。

現在は、前者の方法を使っての Manin 予想への応用を検証しつつ、後者の方法の Hilbert 保型形式への拡張についても (既に知られてるか微妙なところのようですが) 考えているという感じです。
何かわかり次第、ご報告いたします。

今回も特に載せる写真はないので、毎日家のあたりから見える夕日の写真を載せておきます。
研究についての続き_e0194142_1343572.jpg

きれいですねぇ。
by keio-itp | 2013-11-27 13:46 | 2013年UCバークレー・高井