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慶應義塾ITP派遣生からの現地報告書です


by keio-itp

カテゴリ:2013年UniBwM・三浦( 4 )

最後の週

ついに最後の一週間を迎えました。
ずっと研究に没頭していたので2ヶ月という期間はとても短く感じました。

月曜はGreither先生がUniBwMにてミニ研究集会を企画してくださいました。
講演者は自分も含め三人だけでしたが、ミュンヘンの近くの実家に帰省中のA. Nickelさんの講演を聞くことができ、また研究について色々お話しすることができてとても価値のある一日でした。
火曜と水曜はGreither先生と今まで出来たことの総括をしておりました。今まで問題も沢山ありましたが結果的に大部分が解決できたので良い結論が得られると思っていたのですが、最後の最後に(再び?三度?)躓いてしまいました。多くの代数的な準備のもとイデアル類群とそれに作用する群環を射影次元が1になるように修正し、そのFittingイデアルを求めることがほぼ出来かけていたのですが、その加群の射影極限(岩澤加群を修正したもの)が一般には良い性質をもつとは限らないことが最後に分かってしまいました。(下のGalois群の作用する加群として良い性質をもつものを作ろうと加群を修正していったのですが、小さく修正しすぎてしまったようでΛ-加群としては射影次元1とは一般には言えなくなってしまいました。)この障害をどのように回避すれば良いかまだ分かりませんが、射影極限ではなく帰納極限のPontryagin双対を考えることで議論を修正できるかも、と考えています。岩澤理論パートは恐らくやり直しになるでしょう。日本に帰国後、出来るだけ早くこの問題を処理してGreither先生と連絡を取りながら研究を完成させたいと思います。

毎日朝から晩まで研究に集中できる素晴らしい環境の中充実した2ヶ月を送ることができました。サバティカル中にも関わらず多くの時間を割いて私の相手をして下さったGreither先生にはいくら感謝しても感謝しきれないくらいです。本当にありがとうございました。また私の滞在をサポートして下さったUniBwMのスタッフや友人達、ITPでの渡航を許可して下さった慶應大学数理科学科の太田先生、Greither先生と知り合うきっかけを下さった指導教官である栗原先生、色々な事務手続きを行ってくださった国際センターの方に心からお礼申し上げ、報告の結びとさせて頂きます。どうもありがとうございました。
by keio-itp | 2013-03-30 08:01 | 2013年UniBwM・三浦

4週目~5週目

ずっと雪の日が続いていましたが、今週になって一気に気温が上がり晴れの日が続いています。雪が解けて芝生に小さな花が咲いていましたが、しばらくするとまた雪になるらしいです。

研究ですが、色々な代数の準備がうまくいき,また考えているray class groupの岩澤理論的な振る舞いも良くわかり順調かと思っていたのですが今週大きな壁にぶつかりました。岩澤加群(やray class group)と考えている環を適当に修正することで代数的に扱いやすくし、そのFittingイデアルを決定できるというのがこれまでの議論で分かってきたことでした。Brumer-Stark予想のためには修正した加群から元の加群の情報を引き出す必要がありますが、現在考えている問題がやや複雑なこともありGreihter-Roblot-Tnagedalのtrickが機能しない場合があるのです。適当な条件を付ければ議論は回復しますがかなり不満が残ります。これ以上を望むならさらに代数を洗練する必要があり、なかなか難しい状況に直面しております。しかしながら(これまでがうまくいきすぎていたため)やっと数学の研究という感じがしてきて、辛くもありますがすごく楽しくもあります。残りの時間で少しでも進展できるよう頑張りたいと思います。

研究以外では、木曜にGreither先生の自宅に招待して頂きました。奥さんの手料理(とても美味しいラザニアでした)と美味しいビールを飲みながらのとても楽しい時間でした。つい長居してしまい最寄駅からのバスがなくなっていたので歩きましたが昼は晴れていてもミュンヘンの夜は冷えます。日曜はオペラに誘われてGreither夫妻と「エイシスとガラテア」を見てきました。もちろん全てドイツ語でしたが事前に英語の対訳(といっても英語がオリジナルですが)を貰って予習していたのでなんとかついていけました。言葉は分かりませんでしたが演奏はとても感動的でした。指揮者とチェロ奏者以外はアマチュアの奏者らしくGreither先生と親交のある方ばかりだったので終了後の食事会にもお邪魔しました。こちらに来てから数学関係者以外と話すのはとても新鮮でした。

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by keio-itp | 2013-03-05 14:00 | 2013年UniBwM・三浦

二週目~三週目

ミュンヘン到着から2、3日は晴れた日が続いて暖かかったのですが、週末から天気が崩れてきて大雪になりました。晴れた日が続いていたのが珍しかっただけで、冬のミュンヘンはこれが普通の天気だそうです。すこし晴れ間があるなと思っても10分後には曇り空で雪がちらつくことも良くあり、気候になれるまで大変でした。

週末に(雪だったので外出せずに)引き続き具体例の計算を色々とおこない、現在の状況を明確に把握できるようになってきました。
少し研究の内容についてお話ししたいと思います。私は、代数体のイデアル類群(整数環が単項イデアル整域からどのくらい離れているか測る不変量)について研究しています。イデアル類群とゼータ関数の間には多くの神秘的な関係性が知られていますが、未解決問題としてBrumer-Stark予想と呼ばれる予想があります。この予想は(大雑把に言って)Stickelberger元というゼータ関数の特殊値から定まる元が、イデアル類群を消すであろうという予想です。本来はイデアル類群に関する予想ですが、「Stickelberger元がある射類群の族を消すであろう」という元の予想と同値な定式化も知られています。Brumer-Stark予想については最近いくつもの大きな研究成果が挙がっていますが、その手法はイデアル類群自身ではなくある射類群の族の方を調べるという方向にshiftしてきているようです。私はイデアル類群自身のGalois加群としての性質を研究してきましたが、この滞在では、次のようなことをメインテーマの一つとして取り組んでいます。
「これまで培ったイデアル類群に対する研究手法をGreither-Popescu両教授による最近の射類群のannihilationに関する研究と組み合わせることで、素点の分岐に関する条件がより複雑な場合にも射類群のannihilationを言えないか?」
この問題に取り組むための一応の理論的な戦略はあるのですが(穴も多いのですが...)、具体的な場合にどのようなことが起こっているのか見てから一般論に進んでいきたいと思っていて、そのための計算をずっとしていました。今まで射類群の計算はしたことがなく、考えている代数体も有理数体上Galois拡大でなかったので、具体例の計算ができるかどうか分からなかったのですが、前回書きましたように計算ソフトの説明書と格闘すること半日、なんとか(面倒なプロセスをいくつも踏んで)計算できるようになりました。

現在の作戦では、どのようなEuler因子が現れて、それをどのように処理すべきかが大きな問題の一つとなりますが、具体例をいくつも計算したことで問題を明確に把握することが出来ました。いくつかのEuler因子はこれまでの手法を流用することで処理できますが、現在考えている条件下では今まで扱ったことのないEuler因子も出現します。これに対してGreither先生がGreither-Roblot-Tangedal三教授の共同研究において用いた手法でこれを処理できるのではないか、という大変に鋭い洞察をしてくださいました。その手法を一般のpベキ次巡回拡大にまで拡張できないか連日Greither先生とディスカッションしています。(とは言うものの最近は教えてもらうことの方がとても多くなってきています...もっと頑張って色々とアイディアを出していかねば。)

朝大学に行って、Greither先生と前日に考えたことを報告し合い、昼には学科のみんなと食事に行き、食後のコーヒーを飲みながらGreither先生と雑談し、さらに議論することがあれば午後も議論し、特になければオフィスに戻り研究に専念する、という毎日を送っています。Greither先生は現在sabbatical期間中でdutyがないからと(いくつかの会議のみ)、私のためにとても多くの時間を割いてくださって、いくら感謝しても足りないぐらいお世話になっています。

まずは上で述べた問題をなるべく早く解決して、次のステップ(岩澤理論の応用)に進んでいきたいと思っています。
by keio-itp | 2013-02-21 10:00 | 2013年UniBwM・三浦
ミュンヘン連邦軍大学(Universität der Bundeswehr München、UniBwM)のC.Greither教授の下に約2か月間滞在することになりました、数理科学科の三浦崇と申します。これから2か月間現地での研究や生活について報告していきたいと思います。

1月29日の6時ごろミュンヘン国際空港に到着、そこからUniBwMの最寄駅まで電車で移動しました。UniBwMはミュンヘン中心部からはやや外れたところにあり、駅からも徒歩15分はかかる距離なので、初めてだと大学に辿り着くだけでも大変です。当日は、Greither先生が事前に計算機科学部のシステム責任者のT.Krugさんに私を迎えに行ってくれるようお願いしてくださっていたので、問題なく大学内の宿舎にチェックインすることができました。結構広めのシンプルな部屋です。

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翌日にGreither先生と会う約束をしていましたが、Greither先生がいらっしゃるのが午後からということだったので、計算機科学部の教授やポスドクの方々に昼食に連れて行ってもらいました。学食は日替わりの数種類のメニューの中から好きなものを取り会計するシステムなのですが、どの皿をどのくらいの量取ったとしても一律3ユーロというリーズナブルな値段設定になっておりとても助かります。
この日は学食や大学の敷地内で軍服を着た多くの学生を見かけました。さすが連邦軍大学だけあってみんないつも制服を着ているんだなぁ、と思っていると水曜日だけは特別のようです。水曜は午後の授業がすべて休みになり、学生は軍服に着替え重い荷物をもってトレーニングに出かけるという日らしいです。確かにその他の平日はみんな普通の格好をしています。

こちらが滞在期間中のオフィスです。マダガスカルから来ているというポスドクの方と相部屋ですが、現在は休暇のため帰国しているらしく、一人静かな環境で研究に集中できそうです。

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午後になってGreither先生と会うことが出来ました。困ったことはないか、時差ボケは大丈夫か、疲れていないか、と色々と気を遣って頂きました。12時間のフライトでしたが時差ボケも疲れもなかったので、さっそく数学の話に。この滞在期間中に研究しようと思っていることを簡単に説明したところとても興味をもって下さいました。翌日はもう少し細かい部分を説明しました。ディスカッションする時間も多く確保してくださるうえに、有益な助言や疑問を沢山提示してくださって大変ありがたいです。この日のディスカッションでは、あることを具体的な計算例で確かめられると良いんだけど...ということになりました。そのためには、今まで私の馴染みのある計算(ほぼルーチンワーク化できた計算)とはちょっと違う計算をしなければならなく出来るかどうか分からなかったのですが、計算ソフトの分厚いマニュアルと半日睨めっこするうちに、出来るのではないかと思えてきました。そして翌日、実際に知りたかった具体例をちゃんと計算することができ、理論的な部分とのつじつまも合いました。早速Greither先生に報告し、(まだ極々初めの方のステップではあるけれど)これはいい感じだということを二人で話しながら最初の週を終えました。まだまだ困難を極めそうな研究計画ではありますが、この滞在期間中に少しでも進展できればと思います。研究のもう少し詳しい話も、そのうちご報告できればと思います。
by keio-itp | 2013-02-05 02:49 | 2013年UniBwM・三浦